神社に参拝するとき、「これで合っているのだろうか」と迷うことがあります。
作法そのものは難しくありません。ただ、なぜそうするのかを知っていると、同じ動作でも過ごし方が変わります。
この記事では、鳥居をくぐってから拝殿を離れるまでの流れを、神社本庁が示す作法にそってまとめました。あわせて、その由来として伝えられていることも紹介します。
拝礼の仕方は神社によって異なる場合があります。神社本庁も「神社によっては特殊な拝礼方法を行っているところもあります」と説明しています。現地に案内があれば、そちらに従ってください。
鳥居|ここから先が神域

鳥居は、神様のいらっしゃる御神域と、日常の世界とを分ける境目にあたります。門であり、結界の象徴とされてきました。
だから、鳥居をくぐる前に一度立ち止まり、軽く一礼します。 人の家を訪ねるときに玄関で挨拶をするのと同じことです。帰るときにも、鳥居を出てから振り返って一礼します。
朱色の鳥居が多いのはなぜか
朱色は魔除けの色とされてきました。あわせて、朱の原料には木材の防腐剤としての働きがあり、風雨にさらされても長持ちするという実用的な理由も伝えられています。
信仰の意味と、建物を保たせる工夫が重なっているわけです。もちろん、石や木の色のままの鳥居も数多くあります。
「鳥居」という字について
「鳥居」の名の由来には諸説あります。
よく挙げられるのが『古事記』の天岩戸の場面です。天照大御神が岩戸に隠れたとき、知恵の神である思金神が常世の長鳴鳥(にわとり)を集めて鳴かせたと伝えられています。このとき鳥が止まった木が鳥居の始まりだ、とする説です。
ほかに、神氣が留まる場所という意味で「憑居」の字を重ねる見方もあります。いずれも定説というわけではありません。
参道|端を歩く

参道の中央は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、神様の通り道とされています。そのため、歩くときは中央を避けて、左右どちらかに寄ります。
正中を横切らなければならないときは、軽く頭を下げて通ります。
急ぐ必要はありません。参道は、拝殿にたどり着くための移動距離ではないという見方もあります。日常から気持ちを切り替えていくための時間として設けられている、という捉え方です。
手水|禊を簡略にしたもの

参道の入り口付近には、手水舎が置かれていることが多くあります。ここで手と口を清めてから拝殿へ向かいます。
読み方はひとつではありません。「てみずや」のほか、「てみずしゃ」「ちょうずや」などとも呼ばれます。
何に由来するのか
神社本庁は、手水を禊祓(みそぎはらえ)を簡略化したものと説明しています。
『古事記』には、伊邪那岐命が黄泉の国から帰ったあと、水に浸かって禊祓を行い、穢れを祓ったと記されています。手水はその流れをくむ行為とされています。
つまり、手水舎で水を使うのは「汚れを落とす」ためではなく、身を改めるという意味を持っています。
手順
- 右手で柄杓を取り、水を汲んで左手を清める
- 柄杓を左手に持ち替えて、右手を清める
- 再び右手に持ち替え、左手に水を受けて口をすすぐ
- もう一度左手を清める
- 柄杓を立てて、残った水で柄を清めてから伏せて戻す
⚠️ 柄杓に直接口をつけません。 水は最初に汲んだ一杯で最後まで賄うのが本来の形とされています。
近年は柄杓を置かず、竹筒などから水が流れ続ける形の手水舎も増えました。その場合は、流れる水で左手・右手・口の順に清めます。案内が出ていればそれに従ってください。
拝殿|二拝二拍手一拝

全国の神社で共通する拝礼の作法が、二拝二拍手一拝です。
- 神前に進み、姿勢を正す
- 腰を90度に折って、深いお辞儀を2回(二拝)
- 胸の高さで両手を合わせ、右手の指先を第一関節ほど下にずらす
- 肩幅に手を開いて、2回打つ(二拍手)
- ずらした指先を揃え、心を込めて祈る
- もう一度、深いお辞儀を1回(一拝)
お賽銭は、この前に静かに納めます。神社本庁は、箱に投げ入れる際には丁重な動作を心掛けるとよいと説明しています。鈴があれば鳴らします。
「柏手」と書く理由
拍手を「柏手(かしわで)」と呼ぶのは、両手の指を揃えて打ち合わせる形が、柏の葉に似ているからと説明されています。
右手をずらすのはなぜか
両手を合わせたとき、右手を少し下げます。これには、神様と人との間にはまだ隔たりがあることを表す、という説明が伝えられています。拍手を打ったあとに指先を揃えることで、神様と人とが結ばれるという形です。
作法より前にあるもの
神社本庁は、作法の「形」の前提として「心」があると説明しています。心身を清めることが参拝の必須条件であり、誠の心を捧げ、神の加護に感謝することが大切だとされています。
裏を返せば、手順を一つ間違えたからといって、参拝が台無しになるわけではありません。
迷ったら、鳥居の前で一礼し、手と口を清め、静かに二拝二拍手一拝をする。それで十分に形は整います。
この記事で参照したもの
- 神社本庁「参拝方法」「手水舎について」
- 榛名神社・鹿島神宮・香取神宮の現地案内
まとめ
- 鳥居の前で一礼してからくぐる。帰りも振り返って一礼する
- 参道の中央(正中)は神様の道。端を歩く
- 手水は禊祓を簡略にしたもの。左手→右手→口→左手→柄の順
- 拝礼は二拝二拍手一拝。右手を少しずらして打つ
- 神社ごとに特殊な作法がある場合は、現地の案内に従う
作法を覚えると、境内での時間の使い方が変わります。手順に気を取られなくなるぶん、その場の空気や音に気づけるようになります。
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