神社の境内を歩くと、本殿のほかに小さな社が建っていることがあります。
鳥居と社が一組になって、ぽつんと置かれていることもあります。あれは何を祀っているのでしょうか。
この記事では、摂社(せっしゃ)と末社(まっしゃ)の違いを、神社本庁の説明にそって整理します。
境内の社には呼び名がある
本殿以外の社は、まとめて境内社と呼ばれることがあります。そのうえで、摂社と末社という呼び分けがあります。
どちらも本社に属する社です。格が違います。
摂社と末社の違い
神社本庁は、戦前の基準として次のように説明しています。
摂社とされたのは、本殿御祭神の荒魂(あらみたま)や后神・御子神を祀った社です。
あわせて、御祭神と関係のある神や地主神など、特別な由緒がある社も摂社とされました。
そして、それ以外が末社でした。
摂社は末社より上位に置かれていました。 現在でも、本社との由緒が深い社に摂社の呼称が用いられています。
つまり「小さいから末社」ではありません。本社の御祭神とどれだけ近い関係にあるかが分かれ目です。
荒魂を祀る社という実例
定義のなかで分かりにくいのが「荒魂」です。
荒魂とは、神の働きのうち荒々しい側面を指す呼び方です。穏やかな側面は和魂(にぎみたま)と呼ばれます。同じ神を、働きの面で分けて祀る考え方です。
冒頭に載せた鹿島神宮の奥宮が、そのまま実例になっています。
奥宮の御祭神は武甕槌大神荒魂です。本宮に祀られている武甕槌大神の、荒魂を祀る社ということになります。だから奥宮は摂社です。
神社本庁の言う「本殿御祭神の荒魂を祀った社」が、そのまま当てはまります。
東国三社と榛名神社の場合
手元の記録で見比べてみます。
- 鹿島神宮 — 奥参道の先に鎮座する奥宮が摂社。慶長10年(1605年)に徳川家康が本宮として奉納したものと伝えられています
- 香取神宮 — 奥宮が摂社。ここでも御朱印が授与されています
- 息栖神社 — 稲荷神社、高房神社、伊邪那岐神社、鹿島神社、香取神社、奥宮など、複数の末社
- 榛名神社 — 国祖社があり、「国祖社および額殿」として国指定重要文化財の一つに数えられています
奥宮を摂社と呼ぶ神社が二社並んでいます。本社の神と深く結びついた社が、参道の奥に置かれているという形です。
伊勢神宮の125社の数え方
摂社・末社の話でいちばん驚くのが、伊勢の神宮です。
神社本庁の説明によると、「伊勢神宮」とは内外の両御正宮のほか、別宮・摂社・末社・所管社を含めた125社の総称を指します。
そして分け方が明確です。
| 区分 | 基準 |
|---|---|
| 摂社 | 『延喜式神名帳』に載っているもの |
| 末社 | 『延暦儀式帳』に載っているもの |
| 所管社 | 両書のどちらにも記されていないもの |
どの古い書物に名前があるかで区分が決まっています。 格の判断が、千年以上前の記録に紐づいているわけです。
どこまで参拝するか
境内社をすべて回るべきか、という疑問が残ります。
神社本庁の参拝方法のページには、境内社まで回るようにという指定は見当たりませんでした。 拝礼の作法についての説明はありますが、順路や社の数には触れていません。
実際のところ、境内社の数は神社によってまったく違います。息栖神社のように複数ある神社もあります。
まずは本社に参拝して、そのあと気になる社に手を合わせる。それで形は整うと思います。数を競うものではありません。
拝礼の手順そのものは神社の参拝作法にまとめています。
社殿の形にも名前がある
社の格とは別に、建物の形にも呼び名があります。
神社本庁は、主要な様式として**神明造(しんめいづくり)と大社造(たいしゃづくり)**の二つを挙げています。屋根の形や入口の位置が違います。
そこから派生した様式として、流造・八幡造・権現造・浅間造などが紹介されています。

榛名神社の社殿は、文化3年(1806年)再建の権現造の複合建築です。本社・幣殿・拝殿が連なり、国指定重要文化財に指定されています。
境内で社を見るとき、格(摂社か末社か)と形(どの様式か)は別の話だと分けて見ると、境内の構成が読みやすくなります。
この記事で参照したもの
- 神社本庁「摂社・末社」「社殿について」「参拝方法」
- 鹿島神宮・香取神宮・息栖神社・榛名神社の各公式サイト
- 文化庁の文化財データベース(榛名神社の社殿)
まとめ
- 本殿以外の社には摂社と末社という呼び分けがある
- 摂社は本殿御祭神の荒魂・后神・御子神を祀る社や、特別な由緒がある社
- それ以外が末社。摂社が末社より上位
- 大きさではなく、本社の御祭神との関係の近さで分かれる
- 鹿島神宮の奥宮は武甕槌大神荒魂を祀る摂社。定義そのままの実例
- 伊勢神宮の125社は、『延喜式神名帳』にあるものが摂社、『延暦儀式帳』にあるものが末社
- 境内社をどこまで回るかについて、神社本庁に指定は見当たらない
境内の小さな社にも、本社との関係と由緒があります。名前を知ると、素通りしていた社が見えてきます。
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